ドローバー・マニアック

地球上で、スティーブナイト氏本人を含め、たった4人。しか絶対に知らないマウンテン・オルガンサウンドの秘密。

この驚愕の“秘密”を解き明かし、世界中のマウンテン・ファンの為にと、自ら執筆してくださったのは、風林火山キーボーディストの川村ケンさんです。
つまり、あとの3人っていうのは、本文を投稿してくださった川村さんと、ボクと、Atsumiさん。(笑)

まずは、川村さんの投稿してくださった文章を、そのまま"生"でお召し上がりください。

 


 

マウンテンのオルガンサウンドにはひとつ、ドローバーのセッティングに秘密があったんです。
というのも、『ナンタケット〜』と、『Don't look back』の2曲で、印象的なフレーズのトップに、なんとD5の音が出てくるんです。
一番印象的なのが、「ナンタケット」でのラストで出てくるオルガ ンがソロになるあの、ドーレ♭シソードラレソーミー、です。
今回の風林火山で、厚見さんがキーボードパートの再現に関して一番こだわっていた音色、フレーズでもありました。

多分、ここだけ300回くらい弾きました。
レズリーやアンプのセッティングも含めた、音色の検証(いかに、似ているか(笑))の為に。

しかし、普通のセッティングですと、オルガンのトップはC5。これ以上、上に鍵盤はありません。つまり、D5は「存在しないはずの音」だったんです。
初期のセッティング、検証段階で、厚見さんと、エージさんと、僕は

「うーん。これ、どうやってるんだろう」

と、随分悩みました。
もしかしたらハモンドオルガンじゃないんじゃないか?とかまで考えまして、RMI で音色を似せて弾いてみたりもしました。
意外と似ていたのですが、いや、 これはやはりハモンドの、トーンホイールの音だということになり・・・。

「映像を見る限り、他にセッティングされてるキーボードも無いしなぁ・・・」。

「あ、もしかして、厚見さん、こういう事は考えられませんか?」。

僕は、一つのセッティングを提案してみました。

それは、「ハモンドオルガンの強制トランスポーズセッティング」とも言えるものでした。
現代のモデリングオルガンならともかく、ハモンドをトランスポーズさせるのは、通常の発想では無理なんですが、ドローバーの原理的には、これで行けるはず。

どうやら、マウンテンでのスティーヴは、ドローバーの下二本(16’と 5’と1/3)を完全に引っ込めることで、オルガン全体の『オクタープ・アップ・トランスポーズ』を行っているんですね。
これによって、通常D4にあたる鍵盤で、D5の音が出せる。

その分、普通のセッティングでの下1オクターブが無くなってしまう為、このあたりをグリグリと擦るオルガンならではのグリスに迫力が無くなってしまう、という痛い副作用はあります。
個人的にも大好きな奏法なので、そこは非常に残念だったのですが、・・・ただ、スティーヴは、ほとんどこれをしてません。
このセッティングの為、できなかったからなのかもしれませんが(笑)。
それでもフレーズにD5を使う為に・・・。そのこだわり。感動的でもあり、考えると、その心意気に、なんだか泣けてくる話でもあります。

しかしとにかく、三人して「これだ。マウンテンのオルガン・セッティングは。」

と納得。

これは、当時のマウンテンの映像で、ほんの一瞬映るスティーヴ・ナイトの手の位置でも検証できました。
あきらかに中央付近で、僕たちの知っている「上の方の音」を出しているのです。当然、違和感を伴いますが、慣れるしかありません。
他の曲ではセッティングを戻すか、どうするか。そうすると、ちょっとワケがわからなくなりそうだったりもします。

D5を使わない他の『想像されたウエスタンのテーマ』などの曲でも、スティーヴはこのオクターブ・アップのセッティングのまま演奏していましたので、やはり頭の混乱を防ぐ意味もあったかもしれません(笑)。
今回の風林火山でも、ドローバーは 8’から 2’までの 4本、という、いわゆる「下4本」のジョンロード・セッティングの1オクターブ上、というマウンテン・セッティングで演奏しました。

ちなみに、『ナンタケット〜』のライブでのあの長いオルガンソロでも、一瞬D5が出てきます。
実時間にしたらほんの、0.05秒程度ですが、確かに。
勿論、ここの再現にもこだわりました。たとえ0.05秒だろうが、なんだろうが、です(笑)。

また、RMI を載せることで、C-3の上鍵盤は弾けなくなります。

RMI のサイズ的に、ここまで被せないと、物理的に載らないからです。
これは当時、スティーヴ・ナイトも同じだったようで、下鍵盤だけで演奏していました。
当然、パーカッションなども効きません(C-3でパーカッションが効くのは上鍵盤のみ)。
この

「下1オクターブが使えない=グリスの迫力が出ない」
「パーカッションを使えない」

という代償を払って作られた、まさにストイックな犠牲的発想の上に、マウンテンのオルガンサウンドは成り立っていたのです。

どうです、泣ける話ではないでしょうか?

って、・・・キーボードを弾かない方には、まるで泣けませんよね(笑)。

Written by Ken Kawamura

 


はい。どうです。 驚いたでしょう!

一見して、使われている文字と文法はまるで日本語のように見えます。

が。

これは、ある限定された民族にしかさっぱり意味がわからない、いわゆる方言というか、ほぼ異国語です。
オルガン州トーンホイール町に住んでいる人だけが、これを読み解くことができるのです。

「エージさんのサイトはマニアックすぎて、サッパリ分からない人の方が多いですよ。」

と、いつも冷静なアドバイスをくれる川村さんともあろうものが。
あろうことか。
やってしまいました。この通り。(爆)
エージさんどころではない、このサッパリ加減たるや。(笑)

これを読んでいる多くの方々(テカ、ほぼ全員)にとっては、「へ?0.05秒?」 なハズです。がしかし。あの、何回聞いても、どうしてもメロディを全部覚えられない、たぶんスティーブナイト本人ももう一回全く同じに弾けない長〜いオルガンソロを、何回でも完璧に弾けてしまう身体になってしまった川村さんにとっては、恐らく、ゆず れない0.05秒の世界なのでしょう。(笑)

というか、音符の単位は、「秒」 なんですかっ。川村さんっ。

で、あんまり可笑しいので、日本語に翻訳してみました。

『マウンテンでは間違いなくハモンドオルガンを使っています。
でもハモンドオルガンの一番高い音の鍵盤より、なぜかもう一音、高い音が出ています。
で。オルガンの音色を調整するドローバーっていうレバーをいぢってるうちに。
全部の鍵盤をまるまる1オクターブ上げる方法を思いついちゃって、そしたら音色までバッチリで。
でも、そしたら、高い音が1オクターブ上がった分、低い音が1オクターブ出なくなっちゃった。
鍵盤を手のひらでこすりまくって、「ドゥギュオン、グュオン」って吼えさせたいのに、「ひやぁーん、いやーん」みたいな。
おまけにオルガンの上に載せた青いRMI エレクトリックピアノが、デカすぎて鍵盤の上までセリ出ちゃうモンだから、せっかく2段あるのに上の段の鍵盤は、弾けない。
ハモンドオルガンの特長でもある、パーカッション(カッカッカッっていうアタック音がオルガンの音に混ざる)は、上段の鍵盤だけでしかできないようになっているので、2段鍵盤の上鍵盤が使えないということは、下鍵盤の柔らかい音しか出せないという事であり。
トイウカ、それなら2段の必要も、ハモンドの必要もねーじゃん。ということであり、でも1オクターブ上げるにはハモンドのドローバーでなきゃ裏技できないし、でもそれだと、ひやぁーん、いやーん、マウンテンすごすぎ〜。(で、涙)』

あれ?チガウかな?
テカ、これも日本語、変?

ささ。
意味がわかるようになるまで、何回も川村センセの文章を読みかえしてください。
今、この瞬間、(約0.05秒間)、66億1589万6755人も住んでいる地球上で、
マウンテンのオルガン・サウンドの秘密を知る 5人めは、貴方かもしれません。
自慢になります。

言いふらすと「何語?」 と思われるかもしれないけど。(笑)

Great Thanks!
Mr. "Drawbers Manaic" Ken Kawamura

重症の川村さんへのお見舞いは、コチラ


《 追 記 》

面白おかしく書いてしまいましたが、スティーヴナイト氏の映像を見ると、青いRMI がハモンドオルガンの上段の鍵盤にかぶさらないよう、後ろ(奥)へズラしてます。
で、そのままだと後ろへ落っこちてしまうので、2本足のツッカエ棒で落下防止策を施しているようです。

そうまでして、上段の鍵盤を弾けるようにしておきながら、前述したパーカッション・サウンドがちっとも出てこない。(笑)

う〜ん、わからん。(笑)

恐るべし、スティーヴナイト。。。と、それを研究している風林火山のお二人。(笑)

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