Amusing Vintage Drum
written by Eiji Farner
NORTHドラムセットです。 そんなカンジの楽器ばかり使用するグランドファンクに魅かれ、暴走サイトGrand Funk Manaicを執筆してきましたので、それなりにそーゆー楽器が好きで、それなりにいろいろ知識も得て来たつもりだったのですが。。。 初めて見ました! で。「これはっ!」と、ビビビと直感が働きまして、このNORTHドラム取材に走ったのでした。 今まで数々の“特別な”楽器を取材してきた中で、トアル確信というか、持論を得たのですが、それは「本物の楽器は“奇蹟”を導く力を持っている」ということでした。 サテ。このNORTH。 今から30年以上前、1970年代後期に短命で散った“幻”のドラムメーカーです。こう見えてヴィンテージです。(笑) で・す・が。 使っていたバンドは、MOON DANCER。
厚見玲衣さん(当時は厚見 麗)がデビューしたバンドです。
はい。もうお気づきですね。 デビュー当時にバンドが所有していたNORTHは、日本に入ってきた恐らく最初の1台をバンドでGETしたそうで、残念ながらバンドの解散時に行方不明(恐らく粗大ごみとして破棄処分)となってしまったそうです。 Grand Funk Manaic でも20〜25年探し続けた超レアな楽器があります。 だいたいにして、資料が全くない。(笑) MESSENGERギター とか、WESTアンプ とかと一緒で、そーゆー楽器って、燃えるんです!(笑) 実際に手に入れて鳴らしてみる。 もはや日本人が、世界一MESSENGERやWESTに詳しい民族であるように、この NORTH MANAIC によって、「なんで日本人はNORTHにやたら詳しいんだ!」と世界中が驚嘆する時代が来ることでしょう。 あ。NORTHね。もちろん知ってるよ。アレだろ、ホレ、こーゆーカッコの。 では、NORTH MANIAC の発進です! なんといっても目を引くのは、この“食虫植物うつぼかずら”をひっくり返したような湾曲した長いシェル(胴)です。
材質はファイバーで出来ています。 アメリカで発掘され、輸入前にヤリトリした写真では白っぽく写っていたので、てっきり白だと思っていたもので、このライトグレーを最初に見た時のインパクトは強烈でした。 「配管みたいだよ。。。家が。。。工事現場のようだよ!」 ネズミ色ではなく、美しいライトグレーであることを、ここに強調しておきます。 打面サイズは、キックが22″、タムタムが6″8″10″12″、フロアタムが14″。 「マトリョーシカみたいに、うまいこと重ねて梱包してあったよ!」って。(爆笑!) もはやここまで堪えていた笑いを耐えきることは誰にも出来ませんっ。 食虫植物の“うつぼかずら”は昆虫などの動物を、おびき寄せ、捕まえ、それを殺して消化して養分とします。その“うつぼかずら”をひっくり返したようなデザインのこのNORTHに、まんまとおびき寄せられ、捕えられ、笑い殺されかけてしまったボクは虫ケラのようなモンです。 独特の形状のタムタムを見ていきましょう。
この美しいライトグレーの造形美を前にすれば、誰もが同じ衝動に駆られるハズなので、やってみました。 できれば小さくなって、打面側からツルリと通過してみたいトコですが、さすがにそれは叶いません。 スイスの山地に住んでいれば、スカート履いてアルプホルンのように打面側を咥えて日常の不満を叫びたくもなることでしょう。 おっと逸れた。 うーん、こう置くと、どこかで見たような記憶がありますでしょ。 バスドラムもシングルヘッドです。 驚くべきことにオリジナルNORTHロゴの印刷されたバスドラ用ヘッドがこのトーリ残っています。 バスドラの打面側(キックビーターがヒットする側)に張るヘッドは、消耗して破けてしまう物なのに、その打面ヘッドにロゴを印刷してしまったという考えの浅はかさ(笑)が、なんともセツナすぎます。 キックの強大な衝撃で破けてしまう打面ヘッドは、いつかは交換しなければなりません。 普通、メーカーロゴは打面の表側に印刷されていますが、それでは叩いているドラマーにしか見えないから裏面に印刷されているワケです。 つまり、ヘッドひとつ取っても普通ではない。(笑) すべてがユニーク過ぎて市場に受け入れられず、地球上から消滅してしまったNORTHですが、決して楽器としてのクリオリティが低かったのではありません。 例えば、タムタムのホルダースタンドです。 80年代に一世を風靡したラックスタンドの原型が既に採用されています。 これほどまでの造形美と独特のサウンドを持ちながら、何故、NORTHは売れなかったのだろうか? 実は今回、輸入した箱から出して、貼られていた古いヘッドそのままで叩いてみたら、いわゆる鳴りが悪いんで、ちょっと残念な第一印象だったのです。 「そうそう、こんなカンジの音だったよ。実は当時もサウンドは気に入らなくて、今回もサウンド的には期待してなかったから、この程度で十分だよ。」 「う〜ん。。。見た目はそれこそVOWWOWの新美俊宏さんサウンドみたいなドウゥーンってカンジなんですけどねえ。。。」 「じゃあ新美君が使っていた黄色いドラムと同じヘッドに替えてみよう!」 「すみません、2年前の新美さんのスペック詳細、覚えてないんです。」 「よし、本人に訊こう!」 カクシテ。 詳細な指南メールが、新美さんから待ってましたと言わんばかりに“即答”で届き、(笑) その通りのセッティングでヘッドを交換したら。。。
ドウゥーン! 「昔はこんな音、しなかったよ!」 恐らく、70年代末当時には、現代のようなヘッドのバリエーションが無く、この特別な構造デザインのNORTHとマッチングするヘッドが無かったのではなかろーか。と。 更に。ヘッドの交換作業をしていた時に、面白いエピソードがありました。 これもまた、実際に入手して、部品を交換したり、チューニングをいろいろ試したりしたからこそ発見できたり体験したりで辿り着けたのであって、それがなければ「記憶の中の鳴らないドラム」で終わっていたワケです。 サテ。なぜに、こんなにもワクワクするような楽しいドラムセットを、ハードロックキーボーディストの厚見さんが入手したかというと。 2013年5月18日。 ライヴ開催が決まった“その日”に起きたミラクルエピソードは、まるで誰かがシナリオを用意したような一日でした。 「遂に、念願叶ってジミーペイジに会う事が出来ました!」 これはお祝いせねばと、厚見さんと2人でジミー桜井さん邸を訪問した帰路、「まだまだきっと素敵な奇蹟は起きるにチガイナイ!」などと思いながら、新大久保で蔘鷄湯を食べ、いつものように食後のコーヒー飲みにデニーズへ。(笑) 以下、その夜の食事&お茶しながらの会話。 「5月に何かやろうかと思ってたんだけど。会場がなくてねぇ。」 「え?18日がOKなんですか? 会場、誕生日で取れちゃったよ。何やろうか。」 「ムーンダンサー!タキオン!」 「メンバー集まるかな。。。電話してみようか。」 「じゃあ機材は当時の“キーボードのお城”でお願いします!」 「これでNORTHのドラムがあれば、バッチリなんだけどなぁ。。。」 「あれ?今、iPhoneでネット検索したら、アメリカで売ってますね。」 「ええ!32年間、見た事ないよっ!!!!。。。。ほ、欲しい。。。」 「買ってください! あ、我慢してたんで、ちょっとトイレに行ってきます。」
で、トイレから戻ってきたら、 これ実話です。(笑) ホンの1〜2時間の間に、アレヨアレヨと。なんか流れ星が雪みたいにキラキラ降って来るようなイメージでした。 つまり、これを読んでくださって、NORTHに興味を抱いた皆さんが、そのサウンドを体験する場所が用意されているという事なのです! がっ! ぬわんと、ライヴチケットは発売当日にソールドアウト。 「MOON DANCER を見たよ!」 70年代末期に彗星の如く月から舞い降り、 時代が追い付けなかった楽器が、光の粒子よりも早く時空を超えて。 本物の楽器、本物の音楽が持つ特別な“なにか”は、 Written by Eiji Farner |