これはレイ・ママラルディAtsumi氏が遂に米国で発掘に成功した60年代製のsunn 100Sです。
これこそが黄金期マウンテンのステージ写真にズラリと並べられ、正に“神通力”を持ったそのサウンドで世界に衝撃を与えた幻のアンプです。

1970年代には商業的にも成功を収め、日本でも馴染みの深いSunnですので、「へ?マボロシ?」と思われる昭和世代の方も多いかと思います。

そう思われた多くの昭和な方がSunnと言えばあの薄べったくて黒い外観を連想されると思うのですが、あの黒いヤツはトランジスタアンプ(最近はソリッドステートって言うんですかね。By昭和人)で、このシルバーフェイスがカッチョ良くスラントしたタイプは60年代の真空管式なワケです。

ま。1960年代と言っても1969年の翌年は1970年代なワケで(笑)、年代や真空管タイプである事が珍しいワケではありません。(真空管タイプという事ダケであれば、米国では“中古品”として、いまいちヴィンテージとしての価値評価が低い扱いで、けっこう流通しています。)

で。何が幻なのか。というと、この100Sこそが、マウンテンご用達モデルであったのに、どーゆーワケか、長い年月探し回ったのに、どこにも無いから “幻”なのです。

余談ですが私はアンプマニア&グランドファンク・マニアでして、日本では全く手に入らない「WEST」のアンプを20数年かけて探し回り、今ではほとんどの機種バリエーションの発掘に成功できた自称“阿呆”なのですが、その阿呆をもってして、世界中のアンプ市場を探し回ったのに(←ウソ。大袈裟。)100Sはたったの2回しか見かけた事がないのです。
しかも2回ともブチ壊れていました。つ・ま・り、幻のWESTよりも更に入手困難なのが、この100Sなワケです。

で。この100S。なんと完動品! しかもキレイ! これはほんとうに奇跡のようなアンプなのです。
前述にて価値評価が低いと書きましたが、この100Sは例外です。なぜならマウンテン・マニアで奪い合うからです。
恐らく市場に出回らない理由のひとつがソレでしょう。そしてもうひとつの理由は、このアンプが手に入った事で判明しました。これは、誰もが手放さない、“神通力”を持ったサウンドが得られるアンプなのです!あんまり素晴らしいので、思わず無断でバラしてみました。(笑)

本邦初公開。中はこうなっています。

 

115Vに昇圧し、スイッチをONにすると、ヴィンテージの6550管×2本が真っ赤に燃えるので、これは出力100Wです。
整流管は5AR4が使われています。

 

ようく見ると、グリルクロスの布がWESTと全く同じですし、トランスも同じです。(が、Sunnとスタンプされています。先にグリルクロスで仮説を立てた“供給説”はSunnからWESTだったのかな?)

コントロールの一番右はCONTOURというツマミですが、これはナニが変わるのかよくわかりません。(笑) が、同じシリーズの200S(←これは中古でよく見かける)には、このCONTOURツマミが無いので、この4個ツマミの100Sにマウンテンマニアはこだわりがあるワケです。
ちなみに、その他のBASS、TREBLEのツマミはやたらと効きます。この辺は同じエクゾーストサウンドを発するWESTよりも良く出来てます。(WESTはツマミいじっても何も変わりませぬ。)

そしてこのアンプ、どデカイ音が出ます。
フツーのベースをつなぐと、これはイカしたクリアサウンドを放つハイファイアンプのですが、パパラルディ氏御用達の全くHighの無いアノ「モー」って音しか出ないEB−1をつなぐと、なぜか突然、超過激に歪んだ強烈なマウンテンサウンドをぶっ放すという。まさにEB-1と100Sの組み合わせだけで起る秘密のケミストリーが、やっぱり存在していたのです。
やっぱり。というのは、実はここに至るまでものすごい数のベースアンプを色々試してきたから語れるワケで、研究に研究を重ね、かなりイイ線まで“神通力サウンド”に迫ったのですが、やっぱり本物につないだとたん。ドンズバサウンドが得られてしまうワケでした。(笑)

ちなみにEB-1だけでしか出せないウルトラLOW域の重低音というのがありまして、それが再生できるアンプは、21世紀のテクノロジー(というか現代のベースサウンドの基準)で作られた現行モデルでは、ただの一台も無いんです。(有名アンプは片っ端から試して全滅でした)
なので、たぶん。この100Sは、パパラルディ氏が偶然見つけたケミストリーなのかもしれません。
ちなみにレズリーウェストも同じ100Sを背後に並べておりますので、ギターもつっこんでみたのですがあそこまで歪みませんでした。なのでなにかペダルの類いを使用していたのかもしれません。(その辺の検証は、この先のお楽しみ。。。山頂への登山道は険しいワケです。)

ステージ写真を見ると、キャビネッットは15インチスピーカー×2発の冷蔵庫みたいなキャビをタテに2台積んでいますが、ヘッドアンプは上下キャビの間(真ん中)に挟まっています。
つまり、下からキャビ、ヘッド、キャビの順に積まれているのですが、ご覧の通り、このヘッドの奥行きは意外にも薄く、とてもこの上に天井近くまでの高さでキャビを積むとは危険すぎるというか、無理があります。
つまり。ヘッドの後ろには、上のキャビを支えるツッカエ棒みたいなモンがあったハズだし、たぶん上のキャビは軽量化の為にカラッポだったりしたカモしれません。

ステージ写真をよ〜く見ると、上のキャビのてっぺんにキャスターがついているんですね。

つまりキャスターでコロコロころがして運んできたキャビを天地ひっくりかえして積み上げているワケですが、注目すべきはステージ写真で見るSunnの壁のロゴはひっくり返っていないのです。
上積み用キャビのロゴプレートは左上から右下にひっくりかえして移植されてるワケです。

なので、上積み専用キャビとなれば、中はカラッポぢゃなかろーか。。。。などというマウンテンの秘密が、このヘッドアンプの奥行きの薄さから垣間見えたりして、やっぱりGETしてみるとサウンドだけぢゃない、いろんな秘密が紐解けていくなぁ。。。などと想い深けつつ。。。

EB-1に100S

ライヴに於けるベースサウンドがD.I.だのラインだのとなった21世紀、これはある意味、絶滅種サウンドなのですが、あの時代も今も、聴いた(浴びた)誰もがノックアウトされてしまう強烈な“神通力”を持ったサウンドをぶっ放す魔法のケミストリー。

一聴の価値アリですよ。


 

Atsumi氏所有の15インチ×2発入りスピーカーキャビネット。

   

日本では正規輸入されるようになった以降の70年代ブラックフェイス+赤いSunnロゴが一般に知られていますが、初期マウンテンの使用していたのは、この60年代シルバーグリルネット+白Sunnロゴなのです。
当時のスペック資料からすれば、パパラルディ氏が愛用したのは恐らくJBL D-140F×2発であっただろうと推測されます。

で。余談なのですが。

このMountain ManiacとリンクしているGrand Funk Manaicに於いて「世界最高、唯一無二」と絶賛されるGFRのMel Shacher氏が放つ強烈なエクゾーストサウンド(←FenderジャズベースにEB-3のPickUpを搭載し、WEST社の200w アンプをバイアス調整せずに頻繁に炎上する状況下でフルテンにして使用することにより得られる)と、Felix Pappalardi 氏のサウンドは酷似しているのと再三申し上げてきましたが、このシルバーグリルネット。なんとWESTのシルバーグリルと全く同じなのです。
グリルネットの網目のサイズや使っている糸は、一見似ていても各社異なるモノなのです。
が、このSunnネットはWESTネットと完全に同じです。

そういえばWESTも15インチJBL×2発のキャビネットだし、もしかしたらWESTのキャビネットって、Sunnに外注生産させてたのかもしれません。(その逆もアリか?)

ちなみに、60年代のSunnアンプを所有してる、Jimi Hendrixトリビュートバンド、「BAND of SHIGEO ROLLOVER」のベーシスト、NOELほんださんの Sunn 2000Sを拝見(拝聴)させて頂いた際に、60年代のSunn と WEST が同じメーカーのトランスを搭載している事を、こっそり発見していましたので、この説、意外と信憑性が高いんです。
(ノエルさんとの出会いのエピソードは、Grand Funk Maniac掲載の「爆音ロックベース・サウンド探訪の旅」を御覧ください。)

ご存知の方も居らっしゃるでしょうが、アンプの音(キャラクター)を決めるのは、実はトランスなんですね。

トランス=そのメーカーの音。なんですね。

なので、同じメーカーのトランスを搭載してるというのは、キャラも似るハズだし、やはりこの2社には、ヌキサシならぬ関係があるような気がします。
提携してた。とか、こっそりパクった。とか(笑)

と、まあ、この年季の入ったシルバーフェイス・グリルクロスは、ヴィンテージ・アンプ・マニアにとっては、大変興味深い、多くの“仮説”を語ってくれるワケです。

爆音で。

あ。キャビの上に鎮座する Marshall のヘッドアンプですが、これは・・・・今はまだ、ヒ・ミ・ツ。
ちなみにコレは、世に溢れている JCM2000 ぢゃありません。ムフ。 ( 続く。。。)

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