Felix Pappalardi Collection

 EB-1

1954年にGibson社初のエレクトリックベースとして発売されたEB-1。強〜烈なサウンドを放ちます。
このMountain ManiacとリンクしているGrand Funk Manaicに於いて「世界最高、唯一無二」と絶賛されるGFRのMel Shacher氏が放つ強烈なエクゾーストサウンド(←FenderジャズベースにEB-3のPickUpを搭載し、WEST社の200ワットアンプをバイアス調整せずに頻繁に炎上する状況下でフルテンにして使用することにより得られる)と、Felix Pappalardi 氏のサウンドは酷似しているのですが、GFRサウンドの秘密がPickUpとWESTアンプの組み合わせにあるように、Mountainサウンドの秘密は正にこのEB-1にあったのです。
多くのディストーションベース・サウンドを看板とするベーシストの中で、やりすぎな程バリバリに歪んでいて、それでいて強烈に音がブットイくて、異常なまでに重低音が炸裂するベースサウンドを放出するベーシストを私はこの2人の他に知りません。

Pappalardi 氏がこだわり続けたこのEB-1、ナントGFRのエクゾーストサウンドをもしのぐ強烈なLOWを放出するのです。
というかLOWだけ。(笑) 皆さんの知っている“常識的”なベースの音はしません。
“非常識”な程の低音だけ。を放出する唯一無二な超個性的楽器なのです。
やりすぎな程バリバリに歪ませても、全く失われることのない、あまりにも多すぎるLOW。これこそがPappalardi氏がEB-1にこだわり続けた“秘密”のようです。
どのくらいLOWしか出ないかというと、普通のベースが「ボーン」というなら、これは「モぉーン」です。
濁点音は出ません。
普通のベース音が「ドゥーン」と聞こえる人には「ルゥーン」と聞こえるでしょう。
「ブン」と聞こえる人には「ヌン」と聞こえるでしょう。

 

貴方がイメージできる一番低いベース音。のずーっと下の音が出ます。最初はToneがゼロなのか、とかアンプがトレブルゼロなのか、とかにわかに信じられない音です。

トレブルフルテン、ベースゼロで、そーゆー音色なのです。

あまり知られていませんがストラップ・エンドピンがくるくる回して外せるようになっており、ここに長い棒を取り付けるとアップライトべースとして立って弾くことができる設計になっています。

つまり、Fender社の発明した「肩からブラ下げてギターみたいに弾く」というより、でっかいウッドベースのエレキ版がこのEB-1なのです。なので音はそーゆー音なのでしょう。

←エンドピンを抜いた状態

たぶんアップライトベーシストをユーザーとして設計されているので、このボディシェイプ。そしてFホールが「書いて」あります。
アップライトベーシストは地味な性格に決まってる。とばかりにPickUpもツマミも茶色に塗られており、とても渋い風貌です。

 

小さなボディからは想像しがたい重量があるこのEB-1は美しい木目の分厚い一枚板マホガニーで出来ていて、この重いボディもまた前述の重低音を生み出すファクターなのでしょう。
重さを減らしてたまるか。とばかりにタイトに彫られたコントロールキャビティの蓋もまた地味好みな茶色になっています。
ボディ表面は50年の年月を象徴するかのようなウェザークラックに覆われており、この素晴らしいコンディションを誇るEB-1に更なる強烈な印象を与えています。

そしてペグもまたアップライトベーシストを意識してのバンジョーペグとなっています。たぶんアップライトとして立てて使うぶんには気にならないのでしょうが、肩からブラ下げて弾くとなると、なんだか使いづらい。(笑)
Gibson社が60年代末にPappalardi 氏の要望に応えて(?)再生産した際に「バンジョーペグだけは不採用」としたのもなんかわかるような気がします。

Mountainのイメージを決定付ける、このEB-1 と LesPaul Jr.ですが、こうして並べて見ると共通点が多いのです。

  • Gibson製
  • 1954年発売 (時代背景としてハードロックを想定していない設計)
  • マホガニー単板ボディ&マホガニーネック
  • 1-PickUp、1-Volume、1-Tone (一種類の音しか出ない)
  • この楽器でしか出ない超個性的な音を持っている(←これこそがマウンテン・サウンド!)
  • かっこいい

私の個人的憶測ですが、LeslieWest氏にJr.を推薦したのは、EB-1にこだわり続けたPappalardi氏なのではなかろうか。と。
マウンテンの緻密に計算された楽曲アレンジと個性的なサウンドアンサンブルを聴けば聴くほど偶然とは思えない意志がそこにあるように思えてならないのです。
前述のGFRが個性的なサウンドの楽器を持ったメンバーが集まった偶然のケミストリーとすると、マウンテンは計算されたケミストリーのようなカンジ。
ブリティッシュロック王道では、一般的にその時代に最高のサウンドを得られる機材(それらは今現在もロックのスタンダードと評されるギターやベースやアンプ)を求めつつ個性を発揮しているバンドが多いのですが、同じように個性を主張するにもアメリカンな発想はやはりちょっと違うのでしょうか。
マウンテンは「音はブリティッシュ」と評価されますが、私にとっては彼らの音へのアプローチにこそアメリカンロックの勇GFRと同じニオイを感じるのです。

強烈で。かっこいい。

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