Felix Pappalardi Collection

 EB-1

このマウンテン・マニアックが開山となって以来、巷では「マウンテン=Gibson EB-1」との強烈なイメージが定着するに至りました。それまでは、

「マウンテン?、ああ、レズリーウェストね。」だったのが、

「マウンテンといえば EB-1 だよなぁ」 と、
街を歩けばどこからともなく聞こえてくるまでになり、

更には、「 EB-1 って、LOWしか出ないらしい。」

「 根本的に皆の知っているエレキベースの音色ではないらしい。」

「音がやたらデカイらしい。」 などの都市伝説がまことしやかに語られ、

今日ではそのサウンドイメージが「危ないらしい」と恐れられるまでに昇華したのは、
マニアック冥利に尽きると申しますか、大変喜ばしい限りです。

で。で。

ちょっと、EB-1について、説明しますと。
トビラのページにて、強烈なオーラを放つEB-1。
これは、かのジャック・ブルース御大やジョン・ポール・ジョーンズ尊師も家宝として所有されている1950年代のオリジナルであり、たいへん貴重な歴史的遺産なのです。

ジャック・ブルース御大が、記憶にも新しいクリーム再結成コンサートで、満を持して持ち出してきたのも、この50年代オリジナルEB-1でしたし、自身のベース教本DVDの中で、演奏テクニックとはナンも関係ないのに「すげえだろ。」と、見せびらかしている微笑ましいシーンも有名です。
JPジョーンズ尊師に至っては、ライヴには持ち出さずレコーディングのみで大切に使用された正しく家宝とされていたようですし、その他には。。。あ、ロニージェイムスデュオ御大の自宅での取材に、これまたインタビューとは全く関係なく「すげえだろ。オリジナルだぜ。」と見せびらかしている写真も見たことがあります。ベーシストからヴォーカルに転職して成功したが、これだけは手離さんっ。と、顔のシワに深く刻まれていたのがとても印象深い写真でした。

つまり、50年代のオリジナルEB-1とは、世界最高のロック・ミュージシャン、最高のベーシストが到達する(というか原点の)、究極のベースなのです。
そして、恐らく唯一、そのEB-1をレコーディングだけでなく、惜しげもなく、ツアーへも持ち出し、自身のアイコンとしたのが、マウンテンのFelix Pappalardi 氏なのです。

がっ!

なんと。Pappalardi 氏の50年代オリジナルEB-1は、マウンテン初期に1本盗まれてしまったそうなのです。これは口惜しい。
マウンテンの名を世界に誇示するキッカケともなった、デビュー間もない初期の名演、かの「ウッドストック」コンサートでは、オリジナル50年代EB-1が使用されましたので、盗難に遭ったのは恐らく69年後半頃でしょうか。
この時点で、すでに生産中止から約10年も経っていたので、“普通なら”、ここであきらめます。
同じくウッドストックの凄まじいパフォーマンスで、そのシンボルとなった THE WHO のピート・タウンゼント氏も、この年に最愛のSGスペシャルが生産中止となって、慌ててイギリス中の流通在庫を買いあさり、で、次々と叩き壊し、手元のSGスペシャルが無くなった時点でメインギターをレスポールに変えたというエピソードが有名ですが、途中経過(叩き壊す)に一抹の違和感を覚えつつも最終的には、あきらめたので “普通” です。

で・す・が。
はい。ここで普通でない執着を見せたのが、Pappalardi 氏です。

Pappalardi 氏は、Gibson社に談判し、10年も前の廃番品を再生産させるに至ったのでした。
いかに、Pappalardi 氏のEB-1への想い入れが強烈であったかが伺い知れるエピソードです。
ちなみに財力でいえば圧倒的であったハズの当時世界最高の名を欲しいままにしていたTHE WHOのPタウンゼント氏もまた、Gibson社にSGスペシャルを数本作らせたそうなのですが、出来上がってきたSGスペシャルは、昨日まで作っていた仕様と異なり、マイナーチェンジ後の仕様だったそうで、お得意さんの言うこと聞かないGibson社の頑固なイメージと、その、ちょっと違うんだよな仕様のSGスペシャルを叩き壊すピート氏の画が入り混じり、'69年〜'70年頃の楽器メーカーの事情というか、当時はオーダーメイドというものが、いかに大変であったか、想い馳せるに感慨深いものがあります。

で。本題。

Pappalardi 氏の“命令”で、再生産となったEB-1。これを世間では、リイシューのEB-1と呼ぶのですが、これまた短命にてわずかな本数しか作られず、結局これも50年代オリジナルと同じくらい今ではレアなヴィンテージ楽器となってしまいました。
そして人気絶頂期のマウンテンで、Pappalardi 氏がメイン愛用されたベースこそ、このリイシューのEB-1なのです。

つ・ま・り。

マウンテンのイメージ=リイシューのEB-1。
という事なのです!今まで黙っててごめんなさい。(笑)
で。ここはマウンテン・マニアック。
なければいけません。探しました。素晴らしいコンディションの1本を。
これが、リイシューのEB-1(恐らく1969年製)です。

オリジナル50年代EB-1と比較すると、PUが茶色く塗装されたカバーから、銀色のメッキカバーになっています。このPUは当時のGibsonベースのほとんどに採用されたサイドワインダー(コイルがPUカバーの下で横に寝ている)で、ポールピースはPUの中央に置かれています。50年代の茶色く塗装されたPUは、完全なシングルコイルで、ポールピースの位置もネック寄りですので、一見してこのリイシューモデルのPUが異なることが判ります。

よく見ると、オリジナル50年代に黒い塗料で描かれていたダミーのFホールイラストや、ボディのアウトラインに沿った細い線も、ラクして描いてません。
ブリッジやペグも、50年代のパーツはもう無かったのでしょう。全てのパーツは、当時売れまくっていたSGシェイプの EB-3 からの流用部品で構成されています。

ここまで違うと、Pタウンゼント氏同様に、却下なんぢゃねーの。
と、思われるトコですが。

恐らく。

リイシュー作ろうしたんだけど、盗まれてしまった50年代オリジナルの見本が、もうどこにも無かったのではないでしょうか。

Pタウンゼント氏も、見本がなければ、「うーん。ちょっと違うような気もするが、こんなだったよーな気もするな。」と、折れていたりしたんぢゃなかろーか。(笑)
まあ、Pタウンゼント氏くらいのSGマスターともなれば、見た目云々よりも、サウンドに“肝” が再現されていなければ納得されないでしょう。

で。で。

このリイシューのEB-1。
そのサウンドの“肝” が、凄い。

もちろん、あの強烈なLOWが炸裂するのです。しかもそのうえ、なんと! 
ほんのチョビっとだけ。50年代オリジナルより、音の輪郭があるのです。←つまり50年代は皆無。(笑)

つまり、ちょんのチョビっとだけ、こっちの方が使いやすい。というか、人間の耳には馴染む。というか。(爆)

なので、Pappalardi 氏 は、このリイシューに満足されて、以降御愛用されたのではなかろーか。

テカ、ここですごい発見です。
この形。楽器としてMAXの重低音が得られるという事です。
PUもブリッジもペグも異なるのに、ぶ厚いマホガニーを、この形に切り抜けば。最高の重低音が出る。という事なのです。
21世紀になって、ペグの重さで音が云々、PUしかり、ブリッジしかり。
ベースに関しては、どんどん多弦化してゲージが太くなり、更にはロングスケール化しています。

が。

このEB-1。ショートスケールです。あたりまえですが弦は4本です。
何の飾りもない、マホガニーの板が、この形に切り抜いたとたん、パーツがなんだろうが、異次元のスーパーLOWが得られるという事なのです。
考えたこともなかったんですが、考えてみれば。この形。
何百年も前から、この形が、全ての弦楽器の究極の形です。
ヴァイオリンも、ビオラもチェロもコントラバスも、V型とかありません。
何百年も人類が研究し続け、プレイし続けた結果、全ての弦楽器の“形”は、これがベスト。と、歴史が証明しているのでした。
High は、金属こするなり、黒板に爪を立てるなり、いくらでも作り出すことはできても、LOWは持って生まれたもの。

楽器も、人の声帯も、アンプ(電気回路)も、そうなっているので、
昔の人は「この形でなければダメでしょ。」と知っていたのではなかろーか。
うん。これ、妄想にしては説得力あるな。

いますぐ。
これを読んでいるベーシストで、LOWが足りないと悩んでしる方は、ご自分のベースをヴァイオリン形に切り抜いてみるベキです!

しかも、どうです。このカッコよさ。Coo!

あ。写真に写っているEB-0を指さして、「なら、これ、切れよ。」とツッコんだ方。
残念っ。この3本のオーナーは、職業:ロック・キーボーディストなの。(笑)
切らねばならないのはLOW不足に悩むベーシストだけ。(爆)

50年代オリジナル EB-1 に始まった、マウンテン・マニアックは、文字通り、究極Mountain Gearと言える、この美しい リイシューEB-1 が揃った事で、いよいよ“山頂”が近づいてきました。

Gibson EB-1を駆使し、強烈なサウンドを放つロックバンド、マウンテン。
最高です!

≪後 記≫

つい先日、強烈なTHE WHO日本公演を見た直後なもので、やたらピート・タウンゼント氏を引き合いに出してしまいました。
マウンテン・マニアックなのにナンモ関係ないんぢゃないか。と違和感が御座いますでしょうが、実はちょっとしたエピソードがあるのです。

なんと、そのTHE WHO武道館公演で使われたHAMMOND C3オルガンは、
このEB-1のオーナーAtsumi氏のC3なのです。

用意されたハモンドオルガンがツアー途中で壊れてしまい、当サイトのステーヴ・ナイト・コレクションに掲載している、日本屈指のグッド・コンディションを誇るAtsumi氏のHAMMOND C3が、現役最強のロックバンドTHE WHOから御指名された。という“逸話”が生まれたのです。
THE WHO日本公演の中でも武道館の2日間が、その他の公演と比較にならないほど、サウンドが素晴らしく、ハードロックしていたのには、こんな隠れた秘密があったのです。(←事実です。筆者は見比べています。)
そして、ちょっと仕様が違ったら、天下のGibson社が相手でも即・却下。と、気難しいことで有名なピートタウンゼント氏が、大感謝して、ナント。。。(中略。ひ・み・つ)。。。という、ツアースタッフもびっくりエピソードもあって。

遂に念願だったマウンテン仕様・リイシューのEB-1を手に入れて、さあベーシストに転向だ。
と思った矢先に、こんどは「やっぱオルガンがトリモツ縁だなぁ。」と。(笑)

あ。これ、'69年〜'70年頃の同じ時期にGibson社に廃盤モデルを作らせたピート氏とPappalardi 氏の間に存在した“赤い糸”が、21世紀の日本で結実した。(んぢゃないかと、勝手に妄想)という、このサイト上で起きたほんとうの偶然エピソードと、いかに、このサイトに掲載しているC3が素晴らしいかという説明でして、けっして自慢話ぢゃないんです。が、ちょっとだけ披露したくて。(笑) 

↑それをじまんとゆうの?

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